ー現場が求める「資質・人材」とは
--採用のトップとして考えている採用基準は?
望月 学力はもちろん、面接や実地試験を通じて、しっかり勉強してきたかどうか実際にこの目で見て判断するようにしています。弊社に入るのは難関で30人に1人程度。厳しいとは思いますが、ホテルの将来を担っていってくれる人材を引き当てたいですから、こちらも真剣です。
--田端さんを採用した理由と現在の評価は?
望月 東京製菓学校に講師として教えに行った際に助手を買って出てくれたのが彼。そのとき話もしましたし、手さばきなど仕事ぶりも見て、良い印象を持っていました。成績も良かったし、学校の先生の評価も聞いて、採用しました。 思ったことをもじもじせずに口に出せる、明確に言葉にして伝えることができる。そういうことがきちんとできる子は多くないので、「お、こいつできるな」と感じました。実際、入社してからもテーマを与えると自分で考えて仕事をこなし、ちゃんと伸びてきてくれています。コンテストに挑戦させたらものすごい勢いで上達して、日本代表の座も勝ち取った。コミュニケーション力はとくに優秀だと思います。なかなかしっかりしてますよ、彼は。
--それを聞いて田端さんの感想は?
田端 狭き門なのは分かっていましたから正直受かるとは思ってなかったですし、入ってからも毎日必死なんですけど、そう言ってもらえてすごく嬉しいです(笑)。僕がこの会社を志望した理由のひとつにコンテストがあって、スキルを磨くための環境としては、ほかと比べても一番の環境だと思って入ったので。
--東京製菓学校についての印象・評価は?
望月 いろいろな学校に教えに行きますが、ほかと比べて感じるのは「本物のプロ養成校」だということ。喫茶店やカフェのようなカジュアルな雰囲気の学校もあるなかで、東京製菓学校はきちんとした教育をされているように思います。設備や機材からして現場と同じものが揃っていますし、専任の先生もたくさんいらっしゃる。一番驚くのは「細かい打ち合わせをしなくてもレシピを送るだけで講義に使う食材や機材が揃う」というところ。プロと同等の仕事ができる教師陣がいつも傍にいてケアしてくれるという点で、やはりプロのレベルにもっとも近い学校だなと感じます。先生のレベルはイコール生徒のレベル。正直申し上げて、東京製菓学校は国内トップクラス。学ぶ側にとって成長のチャンスが多い学校ではないかなと思います。
田端 ここは絶対違うと思えるのは「実践経験」。座って講義を受けてアタマで分かっても、実際にできなかったら何の意味もない。学校では、たくさんの実習を受けてきましたから、先輩の下について仕事をする際にも、言われたものだけを用意するんじゃなく「コレが要るんじゃないか」「こういう工程が入るかも」と予測ができる。自分から積極的に動ける対応力・適応力が身についているなと感じます。授業自体、「自分たちで考えて」やらせるスタイルでしたし、どう工程を組み立てていくかを考えながらやってきたので、レシピを見れば「こういう工程になるかな」とか、自然と段取りを踏まえて動けるようになっているところはあります。
望月 田端の世代は東京製菓学校からもう1人採用しました。同じ学校から同時に複数採用するというのはなかなかありません。2人とも、会社の業務のほかに業界の同世代の人たちと競ってコンテストでトップを獲るくらい結果を出してくれています。また、過去にも弊社で修業を積んだ後に独立したり、新たな現場で活躍している者もたくさんいます。そうした優秀な人材を送り続けてきてくれているので、必然的に学校への期待値は高くなります。
--これからの学校に期待するものは?
望月 少子化の時代に入って大学や専門学校間の競争も厳しくなり、「厳しくしつけることが難しくなってきた」という雰囲気を感じます。でも、教育が緩くなることで、実社会とのギャップはどうしても出てくる。これは弊社のような業種に限らず、全般的に言えることだと思うんです。だからこそ、東京製菓学校にはいままでと同じくしっかりした教育を施して、良い生徒さんを輩出してもらいたいと思っています。
--先輩としてのアドバイスはありますか。
田端 僕自身もそうだったんですが、研修やインターンシップに行かせてもらったとき「何とか自分のスキルで役に立ってやろう」「良いところを見せよう」と考えてがち。でも、逆の立場になってみたら、研修生の技術に期待している訳じゃない。元気で、素直で、一生懸命頑張っているかどうかが気になります。本人はミスしたら気にするでしょうが、「すみません」と素直に謝る、礼儀や誠実に取り組む姿勢を身につけることも大切。それを修得できる学校で学ぶことが重要じゃないかなと思います。
--最後に、保護者の方々にぜひメッセージを。
望月 パティシエになりたい、というお子さんを持つ保護者の方に私から伝えたいのは「すごく良い仕事」だということ。誕生日や結婚式など、つねに人を笑顔にできる、幸せになる瞬間を演出できる職業です。普通なら趣味の世界で終わってしまう「つくること」が、そのまま仕事になっている。好きな人にとっては時間を惜しんでずっと仕事をしていたいって思えるくらい、やりがいがあります。それでお給料がもらえて、コンテストに勝つと褒めてもらえて(笑)。見た目の華やかさのウラには厳しさも根気も必要ですが、技術がちゃんと身につけば将来それなりの生活ができる職業。息子さんや娘さんがパティシエという仕事に興味をもったという時点で、人生の岐路で良いほうを選んでいるんじゃないでしょうか。
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