03 クリオロ 松田 真依|Artisan 若き職人たちの現在地

Artisan
Interview03 松田 真依
お客様が教えてくれた、お菓子の“人を元気にするチカラ”。

—松田さんはパティシエールの道を歩み始めて8年目になると聞きました。最初に、厨房で現在どのような役割を担っているのか教えてください。

 製品の種類によって担当が分かれる製造部門の中で、私はアントルメ(生菓子)を担当しています。“時代に合ったおいしいもので幸せに"という理念のもと、日常のちょっとした贅沢を味わっていただくために試行錯誤する毎日です。 8人で構成されたアントルメチームのリーダーも務めているので、全行程を監修しながら後輩の指導にもあたっています。手本となるべき立場なので、自ら積極的に行動を起こすことを常に心掛けています。
ここで働く前は、母校で3年間教師を務めていました。その依頼を受けたのは、卒業して最初に就職したパティスリーでの修行中で、自信を失いかけていた時期でした。洋菓子作りを“教える"ということは、当時の私にとって大きなチャレンジでしたが、原点に戻ることは自分にとってもプラスになると考えてお引き受けしたのです。目を輝かせて頑張る学生を指導しながら刺激を受け、洋菓子作りを客観的に見つめ直したことで視野が広がりました。その経験を、厨房での現在の役割にも活かしています。

—お店を取り巻く環境や業務の内容は、感染症の影響によって変化しましたか?

 もしスタッフから感染者が出れば、お店を休業にしなくてはならなくなります。店内の感染対策はもちちんのこと、私たちスタッフも体調管理を万全にして臨んでいました。外出自粛でお客様が減ると覚悟していましたが、蓋を開けてみれば、4月から5月にかけてはクリスマス並みの忙しさでした。なかでも大きく増えたのが、インターネットで購入できる製品のご注文です。自宅で籠り切りになっている方がいかに多いか、その数を知って考えさせられました。
とても励まされたのは、召し上がった感想やスタッフへのエールを、お客様がお店のSNSに写真付きでたくさん投稿してくださったことです。「新作のケーキ、ものすごくおいしかったです!」、「こんな時期なのに営業してくれてありがとう」といったコメントをいただき、厨房でもスタ ッフ同士で共有しました。「これほどまでにお客様から愛されているんだ」とあらためて気づき、胸が熱くなりながら感謝の気持ちを込めて作り続けました。生活スタイルや価値観が変わりつつありますが、私たち作り手も柔軟に変化していくことが大事。それが今回のコロナウイルスの件から学んだ教訓です。

—この業界を目指している高校生にメッセージをお願いします。

 芸術作品のように人を魅了し、宝石のようにキラキラしている。そういうものを手掛ける職業に就きたくて、私はパティシエールを目指そうと決心し、専門学校に進学しました。もちろん、上手くいかない時もありますし、簡単にはプロフェッショナルと認めてもらえません。だからこそ、挑戦しがいのある職業だと思っています。
私は8年目といってもまだまだ経験は浅く、現在担当しているアントルメの技術を磨いた後は、ショコラ(チョコレート)に挑戦したいと考えています。マカロンなどの焼き菓子もあれば、健康が気になる方でも召し上がれる糖質を制限したスイーツもあり、洋菓子といっても多岐にわたります。究めようと思えば終わりがなく、人生を捧げられる仕事です。
お客様が「どれにしようかなぁ」とワクワクしながら選び、喜んでくださる姿を目の当たりにできる職業は、探してもなかなかないと思います。お菓子は、特別な日を祝福することもできれば、ちょっとした自分へのご褒美にもなります。そして、今回のコロナウイルスの件でお客様が教えてくれたように、“人を元気にするチカラ"を持っています。その価値を、ぜひ皆さんも実際に感じてください。

【Profile 松田 真依】
2013年3月、東京製菓学校・洋菓子本科を首席で卒業。就職した千葉県内の洋菓子店で修行した後、同校に戻り契約教師を3年間務める。その経験も活かして2017年4月、地域に愛される人気パティスリー『クリオロ』にて現場に復帰。フランス人オーナーパティシエであるサントス氏のもと、即戦力のパティシエールとして製造部門でアントルメを担当する傍ら、リーダーとして後輩の育成にも情熱を注いでいる。

学校法人 東京綜合食品学園|学校法人/ 専門学校 東京製菓学校
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